「げんしけん」をレビュー・紹介





げんしけん

あらすじ

オタクでありながら一般人という立場をなかなか捨てきれないでいた笹原完士は、
「現代視覚文化研究会」、略して「げんしけん」というサークルに入ることにした。
オタクが集まるサークルに入り、自分も真のオタクになるんだという決意を固める。
しかし一緒に入部した同級生には一般人の彼女がおり、彼女もまた「げんしけん」に出入りするようになるのだった。

その非オタクである彼女との微妙なバランスを保ちつつ描かれる部員らのオタクな生活、オタクな青春。
笹原たちの入学から卒業までの「げんしけん」の日常、非日常を描いた作品である。



中央のこの人がいなかったら、この漫画は成立しなかったでしょうねぇ
(C) 木尾 士目/講談社
作家名:木尾士目
掲載誌名:月刊アフタヌーン(講談社)
ジャンル:心理描写 人間ドラマ オタク 恋愛 青春 大学 ギャグ 日常 現代日本 変人 爽やか 変装
巻数:10巻(完結)
各賞:なし
補足:なし



魅力(+余談)


大学を卒業した人はこの漫画を読んで、「俺のときもこんな感じだったなぁ」と思うんでしょうか?

当時高校生だった私からしたら、「大学って楽しいんだろうな」という印象でした。

(ただし、この漫画の場合は「サークルって楽しいんだろうな」と言うのが正しいのかもしれませんが)

とにかく、モラトリアムしている・青春しているあの空気感にはあこがれずにはいられませんでした。

それは多分この漫画の持つ、リアルさっていうものがそう感じさせるのでしょう。

リアルだから、イメージがわく。

イメージがわくから、楽しそう。

多分これはこの漫画の核の一つだと思うんですよね。


前述の「リアルさ」についてですが、これにはまず「リアルタイム」というものについて説明せねばなりません。

この漫画は月刊誌連載だったんですが、最終話が第55話となっています。

そのうち単行本書下ろしの加筆が五話分あるので、四年二ヶ月の連載だったことが分かりますね。

そしてこの漫画はあらすじにも書いたとおり、主人公の大学入学から卒業までを描いた作品であります。

つまりこの漫画内での時間の流れは、現実のそれと同じだったというわけです。

これは新入生が「げんしけん」に打ち解けていったり、部員同士が恋仲になっていったりする過程を

「リアル」に描く上で、それはもう、とてつもなく強い武器となっているんです。

もちろん連載は終わっているので雑誌で連載を追いかけていた人には及びませんが、

単行本で一気読みする際にもこの効果は十分に発揮されます。

ちなみにこれと同じような手法を凝らした漫画といえば「よつばと!」が思い浮かびますが、

あちらは月刊誌連載に対して一話一日ですし、ちょっとコレとは違いますよね。


次に、この物語を主人公・笹原完士のサクセスストーリーと捉えてみましょう。

少し落ち着いて考えてみますと、こいつはとてつもなくうらやましい道を歩いております。

入学当初は一般人とオタクの間でフラフラして友達もいなかったであろう彼ですが、

オタクとしての覚悟を決めた後には友達はたくさん出来ましたし、夢であった同人誌の作成も実現しました。

更には、苦しみながらも自分の本当にしたい仕事に就き、彼女まで作ってしまいます。

これ以上の道がオタクにとってあるでしょうか?

現実にはありえないと思われるような理想の四年間が、実際にありえるかのように描かれているんです。

あくまでもオタクにとってしか理解されない理想ではありますがね。

そんな理想を仮にも体験させてくれるから、高校生は大学生にあこがれるんでしょう。

「こいつら俺の時より楽しそうにしやがって。」と、大学を卒業した人はなってしまうのでしょう。


さて、述べたいことはほとんど述べましたが最後に一つだけ。

げんしけんを楽しめる人はオタクのみであります。

オタクでなければ前段落での感情移入は出来ませんし、第一拒否反応が出ることが予測されます。

学校のオタクグループとは絶対に友達になれないという人はやめたほうがいいでしょう…。

しかしオタクの輪に入ることはためらわれても、毛嫌いはしないような方なら楽しめるはず。

そのような方には是非読んでいただきたいですね。

これは歴史に名を残す名作の一つだと私は思っています。








































































好きなシーン
(+余談)


斑目が春日部さんを意識している回は、たまらん。

メチャクチャ斑目も春日部さんも好きなんですよね。

逆に笹原は割りとどうでもいい。

だって上にも書きましたが、小憎たらしいですもん。

荻上って現実にいたらメンドくさそうではありますが、やっぱり可愛らしいですしね。

それをねぇ…、あんな中途半端な男が…。


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